屋外広告にもGoogleが進出?ディスプレイ&ビデオ360について

前回はディスプレイ広告のお話をしました。そうすると今月になって Google が屋外広告(DOOH Digital Out of Home )に進出するという記事が目に入りました。

DDOHとは何なのか、そこからしてよくわからないという方が多いのではないでしょうか。

私も広告とは、10年以上疎遠になっていたので、よく分かりませんでした。そこで DOOH で Google がどのような広告サービスを提供しようとしているのか、ざっくりとした解説と広告のメニューの特徴をまとめてみました。

  • 広告業界の言葉は、英語だらけでよくわからない
  • 広告業界に詳しくない

広告業界に詳しくない方がざっくり理解できるような形でに対してもなるべく分かりやすくまとめてみましたので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。

ネット業界20年、検索サービスや広告について幅広く扱っていた代理店にいたこともありましたので、その当時のことを思い出しつつ、技術解説には陥らないようにご説明したいと思います。

googleディスプレイ&ビデオ360とは

googleディスプレイ&ビデオ360の成り立ちは、Googleが2007年に買収したダブルクリックビットマネージャーという広告配信のサービスです。元々はディスプレイ広告のための全く別会社ダブルクリック社のサービスがあり、これを Google が買収したわけです。

この Google ディスプレイ&ビデオ360の配信対象に、街中の街頭にあるディスプレイ広告も追加しますというのが今回の NEWS の目玉です。

あらためて調べてみると、ディスプレイ&ビデオ360の広告配信対象は幅広く、通常の主要なネットメディアはもとより、TVer等のテレビコンテンツの動画、SpotifyやRajiko等の音声広告、YouTubeへの広告配信まで取り扱えます。特にYouTubeへの広告を出せるのは、このディスプレイ&ビデオ360だけです。

とはいえ、これらの広告は、室内のディスプレイやスマホ等の屋内空間に閉じていました。これを、屋外に設置してある屋外広告、つまり道端を歩いていて表示される公共の場にある巨大ディスプレイやタクシー内にあるデジタル広告にまで広げるということです。

デジタル広告の栄枯衰勢

ディスプレイ&ビデオ360でどんなことができるのか、について詳しく見る前に、少しここ20年程の「デジタル広告の歴史」に遡ってお話をします。

ディスプレイ広告は、ネットが商用化された最初の頃は、広告の主流でした。このディスプレイ広告の配信で世界を牛耳っていたのが、アメリカのダブルクリック社です。

Google が検索キーワードで広告を配信していたのに対し、ダブルクリックは、ディスプレイ広告の配信で独自のターゲティングをし、世界最大の在庫規模を持っていました。

当時のディスプレイ広告は、画像つまりバナー広告がメインです。回線は3Gの時代です。スマホはなく、動画制作は高価でした。

2000年代以降、検索キーワード連動広告が、効果の高さから徐々に注目を浴び、ディスプレイ広告の売り上げは徐々に落ちて行きます。

2000年代前半、ITバブルがはじけ不景気になると、広告費用は一気に萎み、2000年代後半になるとダブルクリック社の売り上げは非常に落ち込んでしまいました。逆にディスプレイ広告は Google の苦手とする分野でしたから、2007年に Google はダブルクリックのディスプレイ広告のネットワークを買収します。

そして、2000年代後半から2010年は、 SNSが始まった頃で、スマホが普及しはじめます。そして YouTubeが伸び始めます。動画やSNSはディスプレイ広告の得意とする広告配信ジャンルです。

YouTubeを見る人が増えるにつれ、動画広告への需要も増加

SNSやYouTubeの影響が大きくなるにつれ、ディスプレイ広告も再び注目を浴びるようになってきました。

このような流れの中、 いくつものサービスの統廃合をくりかえし、Googleは2018年に、自社が開発してきたGoogle検索広告やGoogle アナリティクス Google タグマネージャなどのサービスと、ディスプレイ&ビデオ360を「Google マーケティングプラットフォーム」という形で統合しました。

ですので ディスプレイ&ビデオ360は元々全く異なる広告配信サービスを基盤にしたものであり、検索キーワード広告とも Google ディスプレイネットワークとも全く別物であるということが話のポイントです。

ディスプレイ&ビデオ360の扱う動画広告は2021年には年率42%で伸びました。2025年には1兆円規模まで拡大すると言われています。 (サイバーエージェント調査)

YouTubeへ広告を配信できる唯一のネットワークが、街角や公共の場のデジタルサイネージまで配信対象を広げるというところで、地域や社会へのインパクトは大きいと思います。

ディスプレイ&ビデオ360の特長

これまで説明してきましたようにgoogleディスプレイ&ビデオ360は、Googleとは別会社が開発し作り上げてきた広告を基盤にしたサービスです。

ではどのような特徴があるのでしょうか、あらためて見ていきましょう。

国内最大級の広告在庫

今やデジタル広告は身近にあふれています。ディスプレイ360では、YouTubeへの配信からタクシー内で表示されるデジタル広告、街中のデジタルサイネージのディスプレイから通常のホームページのバナー広告まで多種多様なデジタル媒体に広告を配信することができます。配信規模においても、日本トップクラスの広告在庫数を誇ります。

独自のターゲティング

ダブルクリック社の時代から、広告配信のために、オーディエンスデータの属性を蓄積しています。ですので、非常に細かく広告をターゲティングして配信することができます。例えば「40代男性 湘南地域 趣味はサーフィン」というような形です。

位置情報に基づくターゲティングが利用でき、郵便番号や住所で地域もこまかく指定できるようになっています。ただ、配信内容をパーソナライズするというところまでは行っていないようです。

またクッキー情報は使用していますが、スマホ等端末側でクッキーをブロックされることも多いので、オーディエンスデータは、あくまでもディスプレイ&ビデオ360側による推定になりますが、当然機械学習を入れてきてはいます。

DOOHの場合、視聴者の位置情報まではターゲティングには使用しないようです。

ただしディスプレイが設置されている場所に伴う周辺の情報についてはターゲティングの要素になっています。例えば渋谷の繁華街に設置されたデジタルサイネージの広告には、 渋谷に集まる若者に最適化された広告が流れるというようなイメージです。

有料版メニュー

ディスプレイ&ビデオ360は、Googleマーケティングプラットフォームの有料版メニューで使うことができです。価格自体は公表されていませんが、非常に大規模なアクセス数とより潤沢な予算を持っている企業のみが使えるサービスとなっています。

有料版の利用料が、月額130万円(上限月10億ヒットまで)ですので、広告費用だけで月間1000万円超える規模の広告費用をもってる会社でなければ使えないことがわかりました。

結論から言うと、ダブルクリックのディスプレイネットワークを基盤にして、GoogleがAI(人工知能)を入れて、屋外広告として動画広告が配信できるようになったというイメージのようです。Google マップとの融合というのはもっとあるかと思ったのですが、それほど大きくアピールはされていない模様です。

まとめ

調べてみて、たった20年間のネット広告の衰勢と、Googleがしたたかに広告シェアを獲得してきたことが、よくわかりました。

また、ディスプレイ&ビデオ360は、それほど1 to 1のターゲティングまでは行っていないこともよくわかりました。今はデジタルサイネージのディスプレイの下に小さなカメラが付いていて、どんな視聴者が見ているのかが判ります。今後はわかりませんが、そこまではまだ行っていないという模様です。

残念ながら、今は大企業向けの非常に予算が潤沢な会社でないと利用できない料金体系になっています。が、これもいずれの日にか、利用しやすい料金体系を持ったサービスが出てくるでしょう。

デジタルサイネージとディスプレイ&ビデオ360は今後注目して行きたいジャンルです。

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