Google解体論が出ています。
海の向こうのアメリカの話で、自分たちに関係がないと思ってはいませんか?
Googleは、Chromeブラウザをはじめとして、アンドロイド等の端末OSまで幅広くサービスを提供しています。
広告をはじめとするGoogleサービスのユーザーとして、Google解体の影響が自分とどのように関係しているのかということについて調べてみました。
Google帝国解体?のあらまし
事の発端は2020年に、司法省がGoogleを独占禁止法違反で訴えたことに始まります。
この裁判の判決が、2024年8月に下されました。これはGoogleという会社にとっては大きなダメージになる可能性があります。
Google反トラスト法裁判
裁判の判決で連邦判事が、Googleが金銭を支払ってスマホ検索の地位を維持しているのは独占禁止法違反とし、「Googleが独占的地位を維持するために立場を乱用した」ことを認めました。
判決を受けて米司法省は11月20日、検索エンジン市場での独占行為を認定されたグーグルに対し、厳格な是正措置案を提示した。
是正措置の概略は以下の4つです。
1)第三者への支払いの停止
Apple等のデバイスメーカーに対して、ブラウザーや端末のデフォルトの検索エンジンをGoogleに設定する費用を支払っているが、この支払いを停止
2)データの開示と共有
Googleは、競争相手との「公平な競争環境」を構築するために十分なデータを開示し、検索結果をMicrosoftやオープンAI等の競合他社に提供する。
3)ChromeやAndroidの「所有権・管理権」の放棄
具体的には、ChromeやAndroidの事業を売却するか、またはサムスンやLGのようなデバイス・メーカーに対して自社サービスの使用を義務付けないようにする。
4)買収や投資の制限
「検索や広告テキスト広告の競合企業、検索配信業者、クエリベースのAI製品や広告技術」への投資や買収を禁止。
どれもGoogleにとっては、かなり厳しい内容です。当然Googleはこれに対して反論しており、またGoogleには独自の是正措置を提出する機会が与えられています。
裁判所は、双方からの是正措置を受け、2025年8月をめどに対応を決定する予定です。しかし結論によっては、訴訟に発展する可能性も高く、最終結論を得るまでには、かなり長引くことになるでしょう。
Microsoftの独禁法違反のケース
これに似たことが25年前にもありました。当時、あまりにも強大だったMicrosoftに対する独禁法違反のケースです。
司法省は1998年に反トラスト法違反でMicrosoftを提訴、2000年に連邦地方裁判所がMicrosoftを2社に分割する是正命令を下しています。
しかしその後、時間はかかったものの、Microsoftは最終的には司法省と和解し、分割を免れました。
しかし2019年にビル・ゲイツがCNBCのインタビューで反トラスト法(独占禁止法)訴訟についてはこう語っています。「Microsoftにとって、反トラスト法訴訟は悪影響を及ぼした。疑う余地はない」司法省との訴訟がどれだけ大きな負担だったかについて、反トラスト法訴訟がなければ、スマートフォンのOSはWindowsが躍進していただろう、ともコメントしています。
事業上の悪影響を考えて、どこかの段階でGoogleは司法省と和解するでしょう。
しかし和解に至るまでの道のりは、かなり長くなると予想されます。この司法省との訴訟はGoogleのビジネスに大きなマイナスになるということは間違いないと思います。
一般のユーザーへの影響
では一般のGoogleのユーザーもしくは広告出稿者、メディア運営側等、インターネット業界関係者にはどのような影響が出るのでしょうか。
いろいろと広範囲に影響が出そうです。
DigiDayでのアンケート
米DIGIDAYはGoogleと司法省との一連の騒動が、どのように影響が出そうか、Googleとほぼ毎日やりとりするネット業界のプロ48人(広告代理店関係者、ブランドマーケター、リテーラー、配信事業者等)に調査を実施しました。

米政府によるGoogle分割の動き。業界関係者は何を思うか?|DIGIDAY[日本版]
この図表の「ChromeがGoogleアドマネージャーに取って代わる」という部分ですが、これはChrome上で動くAIエージェントのことを指しているのだと想像します。ウェブ上で動作するあらゆるタスクを自動化すると言われています。
そして3割の人が、広告配信するウェブやアプリ側の収益減少を予想しています。また、35%はアドテク事業に独立系の競合企業が参入すると予想しています。
Google側も、小規模なウェブサイトでもオンライン広告で収益を得るのに役立っており、Googleで収益化の取り組みを行ってきた中小企業にとっては、予期せぬ影響を与える可能性があると懸念を表明しています。
業界地図の再編
もう一つの可能性は、アドテク業界が一変する可能性です。
3割超のネットのプロが、独立系の競合企業が登場すると予想していますが、今新たなAI検索サービスが伸長しています。
訴訟が長引けば、GoogleはAI検索という新しいジャンルでは遅れを取る可能性があります。
その間にPerplexity AIのような新興の独立企業や、MicrosoftのBing検索が更に伸びる可能性があります。次世代のAIによる検索で誰が覇者になるのかは、まだわかりません。
が、Googleが独占してきた検索サービスは終わりを告げる可能性があります。
他のサービスへの影響
もう一つ、一般のユーザにとって影響がありそうなのが、検索や広告以外のサービスへの影響です。
ネットにアクセスしてGoogle製品を使用する時に役立つからこそ、GoogleはChromeやAndroidおよびその基礎コードを全て無償提供してきました。
これほど大規模にオープンソースを維持したり、投資したりしている企業は確かにありません。
仮になんらかの形で事業分割ということになり、ビジネスモデルが変わってソースコードの無償提供が見直しということになれば、デバイスのコストは上昇してしまいます。
AndroidとChromeはPCやスマートフォンだけでなく、車やフィットネス端末、テレビなど幅広く使われています。これらの端末メーカーにも影響を与えることになります。
また、Googleが無償提供してきたサービスは、基礎コードだけではありません。
eラーニング用のプラットフォーム、ウェブ解析ツールも無料で利用できます。BigQuery等のデータ分析プラットフォームにも10GBのストレージ、1か月あたり最大1TBのクエリまでは無料枠があります。
また、サービス間の連携にも影響が出るかもしれません。
Chromeがログイン履歴を保持してくれるおかげで、Gメール、Googleマップ、Googleフォト、カレンダー等との連携がスムーズに出来、何度もログインしなおさなくても済みます。
例えば、顧客との打合せ予約確認メールを受け取ると、それをGoogleが自動でカレンダーに追加し、出発時刻を自動で通知してくれるのは確かに便利です。こういったちょっとした便利さはなくなるかもしれません。
Googleという巨大なエコシステムの中で当たり前のように無料で使えてきた便利なサービスがなくなってしまう可能性は大いにあるのです。
巨人Googleが弱体することにより、広告業界地図が大きく変わる可能性があります。新たな新興企業が現れるチャンスでもあり、それは素晴らしいことです。
とは言え、これはGoogleでマーケティングを行っていた全ての企業(それが広告の出稿者であれ広告配信側であれ)全てに影響が及ぶ話になってきます。
マーケティング関係者だけでなく、Googleのサービスを無料または非常に低価格で使っていた端末ベンダーからプログラム初学者、一般の利用者にまで影響を与える話です。
まとめ
最初に述べたように司法省とGoogleの訴訟は長引くでしょう。ですからいきなり突然Googleの検索帝国が崩壊するということはないとは思います。
しかしGoogleの広告ネットワークが崩壊することによって、広告配信をメインにしてきたビジネスは大なり小なり打撃を受けることになるでしょう。
また、生成AIでの検索という変化は待ってはくれません。
Googleが訴訟に早期に決着を付けない限り、GoogleはもはやAI検索では主役ではなくなり、Google以外の企業が主役として登場することになると思います。多様な企業が参入して新しいサービスが生れるでしょう。
そしてGoogleというエコシステムの中でビジネスをしてきた企業は、Google以外のビジネスということを少しずつ考えた方が良い段階に来ていると思います。
[参考資料]Google 裁判 Googleの広告技術独占禁止法裁判の影響を評価する