生成系AIで変わりつつあるMicrosoft広告

4月になると広告等のWebマーケティング予算を、どこの媒体に予算配分するべきか悩んでおられる担当の方は多いと思います。

ですが、検討する時間がない時、大抵は前年予算をそのまま踏襲ということになりがちです。

そんな方に向けて最近のMicrosoftの広告プラットフォームにどのような変化が起きているのか解説したいと思います。

2024年はGoogleがサードパーティークッキーを段階的に廃止します。

サードパーティークッキー情報を利用できないことは、当然ながら各企業が独自で収集したファーストパーティークッキーが必然的に価値を持ちます。

こうした状況の中でマイクロソフトが、広告をどのように変えようとしているのでしょうか?

そのイメージをお伝えできたらと思います。

生成AIを軸にこれまでの機能を再編

ご存知の通りMicrosoftは生成AICopilot(コパイロット)を、AIアシスタントサービスとして自社のあらゆる製品に組み込んでいます。

生成AIを軸に、これまでユーザーに提供してきたサービスを再編しているようにも見えます。

Copilot(コパイロット)による変更点

ブラウザ「Edge」を立ち上げれば当然検索ウィンドウにはCopilot(コパイロット)のアイコンが表示されます。

Bingポータルにアクセスすると、BingChatとBingChatEnterpriseという2つのチャット機能は既になくなっており、Copilot(コパイロット)に置き換えられました。

中身はOpenAIのGPT-4なので、OpenAIで有料なものをBingでは無料で利用できるため、その分お得感があります。

「Microsoft365」「Windows11」などにも幅広くCopilot(コパイロット)が導入されています。Copilot for Office365というものも既に存在します。

Copilot for Microsoft365は、昨年2023年11月に提供が開始されており、日本語にも対応しています。法人版の利用料金は、月額約30ドル(一人当たり)で、日本円で換算すると約4,500円です。

Office365にCopilot(コパイロット)が組み込まれていれば、Excelのわからない部分やピボットテーブルの取り扱いなどはすべてAIに尋ねることができます。Excelの名簿の名寄せなどもできるようです。本当にできるなら確かに便利ですよね。

ただ中身はMicrosoftが買収したオープンAIのChatGPT-4です。

基本的な使い方もチャットChatGPT-4と同じで、プロンプトの書き方によって結果が大きく変わります。

ChatGPT-4では有料なものがBingでは無料で利用できるため、そこは魅力的です。

複数のAIを契約すると費用がかさんでしまうので、後は費用対効果です

このようにMicrosoftは人々を助けるサービスとして生成系AIをリリースしてきました。あくまでの人のサポートという位置づけです。賢いやり方だと思います。

AI時代にMicrosoftは広告をどう変えるか

では、広告分野でMicrosoftはどのような立ち位置にあるのでしょうか。

「Microsoft広告」はと言っても、日本でのサービス開始は2022年の5月末からで、まだ1年半しか経っていません。

サービスのメニューも基本的には、Googleのリスティング広告やディスプレイ広告と同じです。

広告の設定も簡単で、Googleの設定をそのままインポートする機能まであったりします。

つまりサービスのメニューとしては今のところそれほど変わりはありません。

では何が違うのか。

Microsoftアカウントの質の高さ

これは生成系AIの機能というよりも今年問題になっているサードパーティークッキーの廃止の影響が大きいです。

サードパーティークッキーが使えないため、来年以降はどの広告プラットフォームも、ファーストパーティークッキーに依存した広告配信という形に変わっていかざるを得ません。

つまりGoogle、Yahooそれぞれのアカウントの中でパーミッションを得たユーザーのクッキー情報のみが使えるわけです。

プラットフォームの中でどれだけ質の高いアカウント情報を保有しているか、ということが重要になってきます。

この点Microsoftアカウントの信頼性は抜群に高いです。

基本的には偽のIDがありません。ユーザー属性もほぼ取得できていると言われています。

これは長年MicrosoftアカウントがOfficeという、ほぼどの企業でも使われているビジネスアプリを提供してきたこと、さらに長年にわたってパソコンのウイルスと戦い続け、そのワクチンをMicrosoftアカウントで無償提供してきた長年の成果と言えます。

これに比べ、GoogleアカウントやYahooアカウントは無料で、いつでもどこでも取得することができました。

セキュリティの信頼性は高いものの、実際に使われていないアカウントが多いのは事実です。

この「アカウントの質」は広告配信のオーディエンスを作成したり、広告をパーソナライズして配信する時に、大きな違いになって現れてきます。

Copilot(コパイロット)の中で広告表示

Microsoftは、1対1のユーザーとのチャットの中で、広告を出すということも企画として考えています。

まだベータ版のサービスではありますが、その人の購買に至る意思決定を支援する新しい広告フォーマット「Compare&DecideAds(比較・決定広告)」がリリースされています。

車でも家電でも本でも何でもそうですが、何を買うかを決断するということは、結構難しいですよね。

どんな人でも判断するのに全ての基準や知識を持っているわけではないので、Aという条件、Bという条件、Cという条件を満たしている商品だけを、まず並べてくれということを生成系AIに頼めば、条件を満たした製品だけを並べてくれます。

条件に沿った形で選択の候補を絞ることができるわけですから、それだけでも大変助かります。

条件を満たす商品を並べる時には、広告の製品とオーガニックの検索結果も同時に表示するそうです。

こうなると、AIが偏った判断をしていないか、というポイントはかなり重要になってくる気がします。

このように、Microsoftはアシスタントサービスということ以外にも、広告という形で生成系AIによって、広告とユーザーのマッチング精度を高めていくでしょう。

まだ企画段階ですが、今後どのような形でリリースされるのか注目です。

まとめ

このように、わずか1~2年でMicrosoftが生成系AIを中心にして、サービスや製品を大きく組み替えて行っていることがよくわかります。

AIそのものの質もしくは信頼性というものは、今後どのようになるかわからないし、仮に機能があったとしても法的な観点でその機能が使えなくなるということも多いに考えられます。

しかしAIが使う「データの質」、これはすぐに大きく変わるものではありません。

「データの質」というのは、アカウントの質です。偽アカウントの有無やユーザー属性が取れているか、ということです。

その点Microsoftという会社の方にかなり軍配が上がると思います。

自社プラットフォームでファーストパーティデータが信頼できるという意味で、もう1つアカウントの質が高いプラットフォームはAmazonです。

サードパーティクッキーが廃止になる来年以降、広告プラットフォーム同士の競争が始まります。

自社の顧客を見て、最適なプラットフォームを選びましょう。

Google一強の時代は曲がり角にきています。