読書家ビル・ゲイツが読んで激賞したというから、読んでみました。
確かに「現代版教養」としてこれぐらい頭にいれとくとカッコいい、という
知的な刺激のある本でした。
数字のウラには意味がある
大半の人って、数字を見ても「で、それで何なん?」になってしまう。
数字の背後に隠された文脈がわからないから。
著者はそのあたり非常に巧で、数字の比較、比喩、例え話で数字の意味を教えてくれます。
エネルギー分野は専門家だけあって圧巻。
単位の意味が分からず、ただでさえ判りにくいジャンルの話を、わかりやすく図解して教えてくれます。
確かに風力タービンには限界があり、自然エネルギーへの切替は、すぐにできるものではなく、時間がかかるものなのだと。
100Kwの電力を買うために、どのくらい働かなければならないかを世界比較してみると、日本が如何に高い電気料金を税金のようにとられているかわかります。
同じように、移動に関するコスト、環境に関するコスト、人類の寿命がどこまで伸びるか等を身近な数字に置き換えて教えてくれます。
このあたり「現代社会の教養」かもしれません。
数字の最小単位とボリューム
著者は数字をどの最小単位で切り取って見せるかが、とても鮮やか。
同時に全体の大きなボリューム感を把握されてます。
大きなボリューム、これも一般の人には想像しにくい。大きな数字になればなるほど、実感値がわかないから。
誰でも自分の一カ月の小遣いは感覚値として把握できるが、国家予算を感覚で把握できる人は非常に稀。
ただ、このボリュームを感覚で把握することは、デジタルマーケなどをやっていると、実はとても大事なことなのです。
どのくらい頑張れば、どのくらいのリターンが得られそうか。どのくらい人力を投入すれば、どのくらいPVが稼げると期待できるか。
単位が10万、100万になってくると案外想像するのが難しい。
あらためて数字のボリューム感を把握する能力って大事だよね、と思い至らせてくれました。
イノベーションについて
著者の最終章は、かなり辛辣で皮肉ですが、大いに賛成できます。
21世紀になって、宇宙だ火星だなど何か物凄いイノベーションができて世界が変わるような想像があるがそんなものは幻想だと。
人類はもっと身近ですぐに実行できるイノベーションを活用すべきだと。
みなさんには、ぜひここで考えなおしてもらいたい。「ハイパーループ」や「永遠の命」などという机上の空論に踊らされるよりも、飛行機の搭乗方式を見直すほうがよほどましではないだろうか。
バーツラフ・シュミル