GA4で生成AIからの流入を調べる方法とは?Directに紛れたGA4流入の実態

あるサイトの分析をしていて、ずっと疑問に思っていたことがありました。

GoogleやBingのオーガニック検索からの流入が緩やかに減少している。しかしDirectに来訪するユーザーが、右肩上がりになっている。

結果として過去1年間、オーガニック検索の減少をDirect流入が補っている形になっていました。

もともとニッチなユーザーをターゲットにしたサイトです。通常、Direct流入は「ブックマーク」や「URLの直接入力」が主な要因です。Directだけが右肩上がりを続けていることが不思議で仕方がありませんでした。

最近「不自然なDirect流入」の正体は、ChatGPTなどの生成AIアプリからのトラフィックである可能性が高いことがわかりました。

そこで、実態を調べてみることにしました。本記事では、GA4では見えない「生成AI流入」の正体と、その計測方法について解説します。

市場の実態:AI検索の規模は想像以上に巨大

AI検索は、すでに想像以上の規模にまで成長しているとのデータがあります。そのアクセスの8割以上は「モバイルアプリ」から発生しています。

2-1.世界の検索トラフィックの5割以上がAI関連?

この実態を裏付けるデータとして、SEOおよびAI最適化のエージェンシーであるGraphite社のCEO、EthanSmith(イーサン・スミス)氏による最新の調査報告があります。

この調査は、アクセス解析大手SimilarWeb(シミラーウェブ)が公開しているウェブトラフィックとモバイルアプリの使用状況データを基に分析されたものです。

分析結果によると、主要なAIツール(ChatGPT、Gemini、Perplexity等)の月間セッション数は世界で450億回に達しており、これは世界の検索エンジン利用ボリュームの約56%に相当する規模です(出典:Graphite/EthanSmith氏の調査)

2-2.AI利用の8割を占める「モバイルアプリ」の影響

調査によれば、これらAIツールの利用のうち、実に83%がモバイルアプリ経由で行われています。

一方、GA4(Googleアナリティクス4)は主にブラウザベースのアクセスを計測する仕組みです。そのため、GA4で把握できる数値の裏側では、SimilarWebが示すような「アプリ経由の膨大なトラフィック」が見えないまま動いている可能性があります。

AI検索は、もはや一過性のブームではありません。SimilarWebのデータが示すように、世界的に非常に大きなトラフィック規模を形成しています。

スマホアプリでの生成AIによる検索は、既存の検索を奪い合うものではなく、新しい検索体験を生み出していると考えられます。

ユーザーの検索体験が「キーワードを打ち込んでサイトを探す」ことから、「AIと対話して答えを導き出す」ことへと急速にシフトしているからです。

移動中や隙間時間にモバイルのチャットGPTアプリで、ちょっとした調べ事をしたことがある人は多いのではないでしょうか。こうした行動の中心が「ブラウザ」ではなく「アプリ」である点には注目すべきです。

したがって、ブラウザを起点とした従来のSEO視点だけでは、この急拡大する検索行動の変化を正しく捉えることは難しいでしょう。

SimilarWebのデータを基にした分析であるため、業種や業態によっては「アプリ利用率8割」がそのまま当てはまらない場合もあります。しかし、「GA4には現れない流入」が実際に存在する可能性がある、という視点は持っておくべきでしょう。

3.計測の罠:なぜGA4でAI流入元を調べるのが難しいのか

GA4で生成AIからの流入が少なく見える最大の理由は、AIアプリからのアクセス時に「リファラ(参照元情報)」が失われ、(direct)として処理されてしまう技術的な仕様に起因しています。

3-1.リファラ(参照元情報)が消えてしまう技術的仕様

通常、GA4は「どのサイトから来たか」という足跡(リファラ)を辿って流入元を判別します。

しかし、ChatGPTなどのモバイルアプリでリンクをクリックすると、アプリとブラウザ間の情報受け渡し(WebViewの仕様など)によってリファラが途切れてしまうケースが多く見られます。これらは主に以下の2つの理由です。

①「アプリ」と「ブラウザ」は別環境で動作している

通常、私たちがブラウザ(ChromeやSafari)でサイトを巡回しているときは、ブラウザが「どのサイトから来たか」という情報(リファラ)を次のサイトに渡してくれます。

しかし、ChatGPTなどのアプリはブラウザとは完全に別の独立したプログラムです。アプリ内のリンクをタップしてWebサイトを開く際、多くの場合はアプリ内に埋め込まれた簡易的なブラウザ機能(WebView)が立ち上がります。この「アプリからブラウザへ世界をまたぐ」瞬間に、「どのサイトから来たか」というリファラが適切に引き継がれず、捨てられてしまうケースが非常に多いのです。

ChatGPTの有料版はGoogleににリファラ情報を渡しているらしいですが、無料版はリファラーを引き継がないこともあるようです。これはユーザ側で設定できるものではなく、OpenAI社の仕様です。

②セキュリティとプライバシーの保護

最近のスマートフォンOS(iOSやAndroid)や主要アプリでは、ユーザーのプライバシーを守るために「どこから来たか」という情報を外部に漏らさないよう、意図的に制限をかけていることがあります。「どのチャット画面のどのリンクを踏んだか」という詳細な情報を、遷移先に伝えないよう設計されている結果、サイト運営者側(GA4)からは「いきなりURLを叩いてやってきた(Direct)」と認識されます。

足跡が見えないアクセスを、GA4は「直接URLを打ち込んだ」とみなして、機械的に(direct)/(none)へ分類してしまいます。

3-2.GA4での見え方と発生する理由(比較表)

実際に、ユーザーがどのような経路でサイトに訪れるかによって、GA4での認識は以下のように大きく異なります。

流入経路 GA4での主な認識 発生する理由
AIウェブ版
(chat.openai.com等)
referral ブラウザ上でドメイン情報が引き継がれるため。
例)生成AIの回答にあるリンクをクリックした場合
AIモバイルアプリ版 (direct)/(none) アプリはリファラーを引き継がないため。例)スマホアプリの生成AIの回答にあるリンクをクリックした場合
GoogleAIOverview
GoogleAIモード
organic Google検索の一部として処理され、通常の自然検索と区別がつかないため。
例)生成AIの回答にあるリンクをクリックした場合
Bingブラウザ版 referral ブラウザがドメイン情報を送信するため
WindowsOS標準搭載のCopilot (direct)/(none) アプリ(OS)からのアクセス扱いになり、レファラーが消えやすいため
AI回答内のブランドから指名検索 organic 通常の検索キーワードからの流入と区別できない。
例)AIの回答を見た後に、ユーザーが確認のため改めて検索し直して流入するため

GA4の標準設定だけでは、モバイルアプリまで含めた生成AIトラフィックを正確に捉えることはできません。directの増加は、生成AI経由の流入が隠れているサインかもしれません。

4.実践対策:GA4でAI流入を「見える化」してみる

2025年現在のGA4の仕様は標準状態ではAI経由のトラフィックを他の流入とひとまとめに扱ってしまいます。

そこで、そこで、以前から気になっていたサイトを対象に実際のデータを検証しました。

見えないAIトラフィックを可視化するには、「GA4の箱(設定)を分ける」「怪しい動きを絞り込む」「顧客に直接聞く」という、デジタルとアナログ両面からのアプローチが効果的と考えられます。

あらかじめ「AI専用の分析枠」を作っておけば、判別可能なデータは自動で仕分けられます。

また、自動判別ができない(direct)については、データの「質(どのページに来たか)」や「ユーザーの属性(新規かリピーターか)」を分析することで、AIからの流入である確率を論理的に推測できるようになります。

ここでは、前者二つの方法に絞って確認しました。

4-1:カスタムチャネルグループの設定(専用の分析枠を作る)

GA4の「カスタムチャネルグループ」を使い、参照元(source)に特定のキーワードが含まれる場合に「AITraffic」というグループに分類されるよう設定します。

設定方法:管理>データ表示>チャネルグループ>「新規チャネルグループを作成」
条件:以下の正規表現を「参照元」に設定します。

^.*ai|.*\.openai.*|.*chatgpt.*|.*gemini.*|.*gpt.*|.*copilot.*|.*perplexity.*|.*google.*bard.*|.*bard.*google.*|.*bard.*|.*.*gemini.*google.*$

詳細はこちらのページに設定の方法が載っています。
ChatGPTやGeminiからの流入はどれだけある?GA4で「AI検索」を計測する方法

カスタムチャネルグループを作っただけですと通常のレポートから呼び出すのにやや不便です。

自分の作成したカスタムチャネルをメニューバーに表示するには、管理画面からメインのチャネルグループの右上にある鉛筆マークを押下、新しいカスタムチャネルグループをデフォルトに設定します。

これにより、レポート上で「OrganicSearch」や「Referral」とは別に、「AITraffic」という独立した項目で数値を確認できるようになります。

ただし、この設定で見えるようになるのは、あくまでリファラ情報がGA4に渡っているセッションだけです。

仕様上は過去データにも遡及して適用されるはずですが、検証時点では期待どおりに表示されませんでした。

4-2:(direct)流入の「質」を絞り込む(AI流入を推測する)

参照元を特定できない(direct)トラフィックの中から、AI由来と思われるものを推定します。

手法A:トップページ以外へのdirect流入を抽出

ランディングページが「ブログ記事」や「技術解説ページ」などの深い階層で、かつ流入元が(direct)のものを抽出します。滞在時間が0秒等はチャットボットと推定できるので除外します。

普通、初めてサイトに来る人がいきなり専門記事や階層の深いページにURLを直接打ち込むことはまれです。ここへのdirect流入が多いということはAIの回答内リンクからの流入と推測できます。

手法B:新規とリピーター比率を確認する

direct流入ユーザーが新規かリピーターかを確認します。

従来どおりの考え方では、ブックマーク経由なら「リピーター」のはずです。もし新規ユーザーが(direct)で大量に訪問しているのであれば、それはAI検索で何等かの形で言及されて流入してきたと考えられます。

4-3.調査結果:生成AI経由の流入規模

2026年2月1ヶ月間で調べてみたところ、リファラルで把握できている数字に、direct経由で生成AIと思われるセッション数を合算すると結果として10%超という数字になりました。滞在時間0秒、イベント数が極端に少ないセッションは除外しています。

2025年の同じ時期も合わせて計算してみました。昨年同時期は約10%弱であり、一定の妥当性があると考えています。

このサイトはオーガニック検索からの流入が4割を占めています。これに対し生成AI経由の流入が1割程度はある、という結果になりました。

現状では、GA4でAI流入を100%完璧に計測する機能はありません。今回は、顧客からのアンケートは実施していません。ですが数字の裏付けのため、今後アンケート調査も実施できるとより望ましいです。

「カスタムチャネルグループで判別可能な分を分ける」「不自然な新規Direct流入を分析する」「アンケートで補完する」という手段を組み合わせることで、生成AIからの流入をおおまかに推定できるようになります。

5.結び:GA4の数字の裏側

AIに引用され、推奨されるということは、ユーザーが検索エンジンで比較検討の前段階で、すでに貴社を「信頼できる候補」として認識していることを意味します。

ですから、生成AIからの流入は、AIとの対話を通じてすでに「関心をもったユーザー」が来訪していると考えられます。

しかし残念ながら、現在のGA4の計測技術では、生成AIアプリ内での対話やブランドの推奨といった「成約に最も近い瞬間」を100%数値化することは不可能です。

現状のGA4の枠内では、今後も完全な数値化は期待しづらいと言えます。ChatGPTやCopilotなど多数のサービスが乱立している現状では、今後数年はこの傾向が続くと考えられます。

生成AI時代のマーケティングにおいて、GA4の数字はあくまで『羅針盤の一部』に過ぎなくなりつつあります。

従来のGA4の数字の読み方に惑わされず、その裏側にあるユーザーの行動と価値を読み解くことが求められています。

最後に、データで追い切れない部分を埋めるのは「顧客の声」です。問い合わせフォームや資料ダウンロードのサンクスページに、「当サイトをどこで知りましたか?」という設問を設け、「ChatGPTなどの生成AI検索」や「ChatGPTなどのAIサービス」を選択肢ラベルとしてどう見せるか、対象読者(B2B/B2C)に応じて調整しても良いでしょう。

表面的な数字に一喜一憂せず、AI時代の新しいユーザー行動を予測し、可視化する準備を整えましょう

AIトラフィックやGA4の活用法について、今後も実践的な情報を発信していきます。最新の更新を見逃さないよう、ぜひXでフォローしていただけると嬉しいです。

[参考資料]